- 投稿日 2025/09/26
- 更新日 2025/09/26
車いすでの傾きを防ぐタオルの正しい使い方 :誰でもできる姿勢保持テクニック
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「車いすに座っていると、だんだん体が傾いてくる」「いつも同じ方向に倒れてしまう」――そんな悩みを抱えるご家庭は少なくありません。
実は、タオルを使うだけで、姿勢の傾きをやさしくサポートすることができます。
本記事では、専門的な知識がなくても実践できる、タオルを使った傾き防止の方法を詳しくご紹介します。
毎日の介護が少しでも快適になるよう、誰でもできる姿勢保持のテクニックをわかりやすく解説していきます。

目次
車いすで体が傾く原因とは?
車いすに座ったときに体が傾いてしまうのは、筋力や関節、骨格など複数の要因が関係しています。
まずは原因を知ることで、正しい対策が見えてきます。
体力・筋力の低下と座位耐久性の低下
加齢や障がいにより、座る姿勢を維持するための体幹の筋力が低下すると、長時間安定して座ることが難しくなります。
このような状態を「座位耐久性が低い」と言い、背中が丸くなる・体が傾くといった問題が起こりやすくなります。
特に高齢者や片麻痺のある方などは、無意識のうちに体重が片側に偏ってしまい、姿勢の崩れが目立つようになります。
時間とともに疲労も蓄積しやすいため、タオルなどで姿勢をサポートする工夫が必要です。
骨・関節の歪みや拘縮、筋肉のこわばり
関節や筋肉が固まって動かしにくくなる「拘縮」や、背骨・骨盤のゆがみなども、体の傾きの原因となります。
たとえば、腰や背中が丸くなってしまう「後弯(こうわん)」の状態では、上体が自然と前に倒れやすくなり、椅子に深く座れない原因になります。
また、片側の筋肉が強く緊張したり、逆に反対側が弱まったりすると、体のバランスが崩れやすくなります。
このような身体の状態に気づくことが、適切な姿勢保持の第一歩です。
在宅でできる!タオルを使った傾き防止【実践編】
タオルは身近で扱いやすく、姿勢保持の補助具として非常に優秀です。
この章では、具体的な部位別にタオルを使った傾き防止の方法を、やさしく解説します。今日から実践できる内容です。
横への傾きに対するタオルの挿入方法
車いすに座ると、体が左右どちらかに傾いてしまうことがあります。
その場合は、傾いている側の体と車いすの間に、畳んだタオルをやさしく挿入することで、姿勢の立て直しをサポートできます。
ポイントは、タオルを「硬く・しっかり畳む」ことです。柔らかすぎると効果が薄くなってしまいます。
また、厚さは体型に合わせて調整しましょう。
体幹を圧迫しすぎないよう、違和感がないかを確認しながら慎重に行います。
介助する際は、無理に動かさず、声をかけながらゆっくり調整することが大切です。
形崩れを防ぐ工夫(ラップ包装など)
タオルをそのまま挿入すると、時間の経過とともに形が崩れてしまい、支えとしての役割を果たしにくくなります。そこでおすすめなのが、タオルをラップやビニール袋で包んで形状を安定させる方法です。
特に、食品用ラップやポリ袋を使えば、簡単に形をキープでき、摩擦によるズレも軽減できます。
また、複数枚のタオルを重ねて使う場合も、まとめてラップで巻くことで、ひとつの固形サポートのように使用できます。
ただし、滑りやすくなる場合もあるので、ずれないように配置場所や使用素材を工夫しましょう。
前ずれ対策としてのタオル配置
体が徐々に前方に滑ってしまう「前ずれ」は、骨盤が後ろに傾いているサインです。
このような場合は、座面の前側にタオルを配置することで骨盤の角度を調整し、姿勢を安定させることができます。
具体的には、膝の裏側からお尻の下に向かってタオルを斜めに敷くようにします。
クッションのように分厚くせず、重ねすぎないのがポイントです。
滑り止め素材の布やシートを併用すると、タオルがずれるのを防げます。
日によって体調や姿勢が変わることもあるため、様子を見ながら微調整しましょう。
前ずれは褥瘡(じょくそう)の原因にもなるため、早めの対応が重要です。
タオルでは防げない時に注意すべきポイント
タオルを使った傾き防止は手軽で便利ですが、状況によっては効果が限定的だったり、逆に危険を伴うこともあります。
ここでは、注意すべき点と代替方法をご紹介します。
NGな使い方とリスク
タオルを無理に詰め込んで体を固定しようとするのは危険です。
体に負担がかかるだけでなく、皮膚が圧迫されて褥瘡(床ずれ)を引き起こす恐れもあります。
また、タオルを左右非対称に挿入してしまうと、かえってバランスが悪化して傾きが強くなることもあります。
さらに、タオルの素材によっては滑りやすくなり、体が不安定になることもあるため、素材選びにも注意が必要です。
姿勢を矯正することが目的ではなく、あくまで自然な座位保持をサポートするという視点が大切です。
本人の感覚や違和感にも配慮しながら使用しましょう。
タオル以外でできる簡易クッション活用法
タオルでは十分に安定しない場合は、市販のクッションを併用するのも一つの方法です。
例えば、滑り止め加工のある座布団や、骨盤を包み込むようなU字型クッションなどがあります。
ただし、硬すぎたり厚すぎたりするクッションは姿勢を崩す原因にもなるため、選ぶ際は「安定性」「通気性」「耐圧分散性」に配慮しましょう。
簡易的に自宅にある座布団を畳んで使う場合も、前後左右の高さバランスを調整しながら使うことが大切です。
また、長時間使用する際は、クッションの位置をこまめに確認し、ずれていないかどうかもチェックしてください。
座位安定のための体を支えるその他の工夫
タオルだけではサポートが難しい場合、専用のクッションや補助具を取り入れることで、さらに安定した姿勢を保つことが可能です。
ここでは、一次サポート・二次サポートという考え方をもとにご紹介します。
一次サポート(クッション・背もたれ)とは
一次サポートとは、身体の基本的な接地面である「座面」や「背もたれ」を活用して姿勢を整える方法です。
たとえば、座面に適切な厚みと形状のクッションを敷くことで、骨盤の傾きや前ずれを防ぐことができます。
また、背もたれの形状を調整することで、上半身をしっかり支え、猫背や前かがみの姿勢も軽減できます。
これらの工夫は、特別な機器を使わなくても、身近な素材や市販のクッションを応用するだけで実現可能です。
ポイントは「本人の身体に合った高さ・硬さ・素材」を選び、違和感のない姿勢をつくることです。
二次サポート(ベルト・ラテラルサポートなど)
二次サポートとは、体のズレや傾きが大きい場合に使用する補助具で、主に体幹や骨盤を外側から支える役割を持ちます。
代表的なものとして、骨盤をしっかりと安定させる「座位保持ベルト」や、体の左右を囲む「ラテラルサポート(側方支持具)」があります。
これらを使うことで、体が横に崩れるのを防ぎ、正しい位置に座るサポートが可能になります。
ただし、強く固定しすぎると逆効果になることもあるため、適切な位置と強さで使用することが大切です。
福祉用具専門相談員などに相談しながら選ぶのが安心です。
座位保持力を高める簡単トレーニング(在宅向け)
タオルやクッションによるサポートだけでなく、本人の体幹やバランス感覚を鍛えることで、より安定した座位を維持しやすくなります。
ここでは、在宅で無理なく行える簡単なトレーニングをご紹介します。
片足立ちや腰回し運動
座位保持には下半身の筋力や体幹の柔軟性が大切です。
可能であれば、立った状態での「片足立ち」や「腰回し運動」を日常に取り入れると良いでしょう。
片足立ちは、机や手すりにつかまりながら10〜20秒程度行い、左右交互に行うのがポイントです。
腰回し運動は、足を肩幅に開いて立ち、ゆっくりと骨盤を回すだけでも、体幹の可動域が広がり、姿勢が崩れにくくなります。
立位が難しい場合でも、座ったまま骨盤を前後・左右に動かす体操で同様の効果が期待できます。
バランス向上のための座位トレーニング

座った状態でもできるバランス向上トレーニングも有効です。
たとえば、椅子に座った状態で軽く体を左右に倒したり、前後に傾けたりする「重心移動運動」は、体幹のバランスを鍛えるのに役立ちます。
また、足を床につけたまま、お腹に力を入れて背筋を伸ばす練習を毎日数回行うだけでも、姿勢保持に必要な筋力が少しずつついてきます。
タオルを背中や腰に当てて姿勢を意識しながら行うと、感覚的にもわかりやすく、無理なく取り組めます。
日常生活の中に自然に取り入れていくことが成功のコツです。
傾きが改善されない場合は専門家へ相談を
自宅でできる工夫をしても、どうしても傾きが改善されない場合は、専門家への相談が効果的です。ここでは、相談先として信頼できる専門職と、その役割についてご紹介します。
ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談する理由
タオルやクッションを使っても姿勢の傾きが改善されない場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するのがおすすめです。
ケアマネジャーは、利用者の状態に応じて適切な福祉用具の提案やサービス計画(ケアプラン)の見直しをしてくれる専門職です。
福祉用具専門相談員は、個々の身体状況に合った車いすやクッションの選定・調整を行い、快適な座位保持を支援してくれます。
これらの専門家は、介護保険制度の中で連携して動くため、費用面の相談もしやすく、無理のない範囲で必要な支援を受けることが可能です。
訪問介護サービスとの連携のすすめ
訪問介護を利用している場合は、ヘルパーや訪問看護師との情報共有も重要です。
日々の介助の中で「体が片方に傾いてきた」「座っていると不安定そう」などの小さな変化に気づいてくれることがあります。
これらの気づきは、ケアマネジャーに報告され、必要に応じて福祉用具の見直しや新しいサービス導入につながることもあります。
また、介護職が日々タオルやクッションの位置調整をサポートしてくれることで、安定した姿勢を継続的に保ちやすくなります。
家庭内だけで抱え込まず、プロと連携することが快適な介護の第一歩です。
高齢者の姿勢を見守るために家族ができる工夫
タオルや福祉用具によるサポートも大切ですが、日々のちょっとした気づきが、傾きの早期発見・改善につながります。
ここでは、家族ができる姿勢見守りのポイントをご紹介します。

姿勢変化に気づくためのチェックリスト
車いすに座っているご家族の姿勢が崩れていないか、以下のようなポイントを定期的に確認してみましょう。
- 頭が左右どちらかに大きく傾いていないか
- 肩の高さが左右で大きく違わないか
- お尻が浅くなり、前方にずれていないか
- 膝や足が左右対称に揃っているか
- 背中が丸まりすぎていないか
こうしたチェック項目を、食事中・テレビを見ているとき・会話をしているときなど、日常生活の中で自然に観察することが大切です。
変化に早めに気づくことで、タオルの調整や専門家への相談がスムーズに行えるようになります。
本人の不調サインに気づくコミュニケーション
姿勢の崩れは、見た目だけでなく、本人の体調や快適さにも大きく影響します。
ただし、高齢者や障がいのある方は、違和感や不快感をうまく言葉にできないこともあります。
そこで、以下のような声かけを意識してみましょう。
- 「この座り方、苦しくない?」
- 「どこか当たって痛くない?」
- 「もう少しクッションの位置を変えてみようか?」
穏やかな口調で、本人の気持ちや体感に寄り添うことで、無理なく姿勢を整えるきっかけになります。
小さなサインを見逃さずに気づけるよう、日々の対話を大切にしましょう。
将来的な傾きリスクを減らす生活習慣の見直し
車いすでの傾きは、姿勢の崩れだけでなく、生活習慣や体調の積み重ねによって起こることもあります。
ここでは、日常生活の中で取り入れやすい予防的アプローチを紹介します。
バランスの取れた食生活と水分補給
筋力や神経の働きを保つためには、日々の栄養がとても大切です。特に、たんぱく質は筋肉の維持に欠かせない栄養素であり、肉・魚・豆製品などを適量摂るよう意識しましょう。
また、カルシウムやビタミンDは骨の健康を保つために重要です。
さらに、高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、脱水を防ぐためにもこまめな水分補給が必要です。
水分が不足すると、筋肉や関節の動きが悪くなり、姿勢の保持にも影響します。朝・昼・夕の食事に加えて、間食や水分補給の時間を設けることが、将来的な傾きリスクの予防につながります。
日常生活でできる姿勢意識トレーニング
姿勢を整える力は、特別な運動をしなくても、日々の暮らしの中で自然に鍛えることができます。
たとえば、椅子に座っているときに「背筋を伸ばしてみよう」と声をかけるだけでも、本人が姿勢を意識するきっかけになります。
また、歯磨きや食事中などの動作をする際に、両足をしっかり床につける、椅子の奥まで深く座るといった工夫も効果的です。
テレビを見るときも、クッションやタオルを使って正しい姿勢を保つように促すことで、無理なく継続できます。
こうした「ちょっとした意識の積み重ね」が、将来の姿勢保持能力の維持につながります。
家庭でできる対応を続けることが生活の質(QOL)の向上につながる
毎日の介護の中で、車いすに座るご家族の傾きに気づき、悩む方は少なくありません。
しかし、タオルを使ったちょっとした工夫や、姿勢を意識する声かけ、そして専門家との連携によって、快適な姿勢を保つことは十分可能です。
無理のない範囲で継続できる方法を取り入れることで、介護される方の負担が減り、介護する側の安心感も高まります。
生活の質(QOL)を高めるために、ぜひ本記事の内容を実践してみてください。
さらに詳しい情報が知りたい方は、関連記事や専門機関の資料もご覧になることをおすすめします。