• 投稿日 2025/12/19
• 更新日 2025/12/22

バリアフリー 階段を自宅に取り入れるためのポイントと費用ガイド

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知識

高齢のご家族や障がい者がいる家庭では、階段が「日常の障害」となることもあります。

本記事では、自宅の階段を安全にバリアフリー化するための基本知識から、具体的な改修方法、かかる費用、補助制度の活用方法まで幅広く解説します。

滑りやすい階段、手すりのない階段など、日常のちょっとした不安を解消するためのヒントを得て、「誰もが安心して暮らせる家づくり」の一歩を踏み出しましょう。

階段バリアフリー化の必要性と対象者・配慮すべき視点

階段は家庭内で転倒事故が多い場所のひとつです。

この章では、そもそもなぜ階段が危険なのか、どのような人が特に配慮を必要とするのかを明確にし、バリアフリーの必要性を具体的に解説します。

なぜ「階段」がバリアとなるのか

階段は垂直方向の移動を強いる構造であり、昇降時に身体的な負担が大きくなります。

特に高齢者や体力の弱い方にとっては、足を高く上げる、バランスを保つという動作が難しく、転倒リスクが高まります。

さらに、階段の勾配が急だったり、手すりが片側にしかなかったり、踏面（足を乗せる部分）が狭くて滑りやすい素材であると、健常な成人であっても危険です。

特に視認性が低い段差は、視力が衰えた高齢者にとって「見えない危険」となります。

このように階段は、住宅内におけるバリアの代表的存在であり、安心・安全な生活環境を整えるためには、まずここから見直す必要があるのです。

高齢者・障がい者・子ども・荷物を持った人…多様な利用者の視点

バリアフリーというと高齢者や障がい者を対象とした対策と思われがちですが、実際にはもっと多くの人にとってメリットがあります。

たとえば高齢者は筋力の低下により、階段の昇降でバランスを崩しやすくなっています。

また、関節や腰への負担が大きいため、少しの段差でも大きな負担になり得ます。

障がい者においても、身体的な障がいだけでなく、視覚・聴覚の障がいがある方も階段の構造に影響を受けやすいため、段差の視認性や手すりの有無は重要です。

さらに、幼い子どもやベビーカーを押す親、重たい荷物を持って階段を使う人にとっても、バリアフリー化された階段は快適で安全な移動をサポートしてくれます。

このように、階段のバリアフリー化は「すべての人の安全性と快適性」を考えたユニバーサルデザインの観点からも重要な取り組みなのです。

階段バリアフリー化における主な設計・施工ポイント

バリアフリーな階段を実現するには、安全性と使いやすさの両立が欠かせません。

この章では、実際の設計や施工において重要となる項目や基準について解説します。

勾配や段差、手すりや滑り止めなどの要素を丁寧に見直し、誰もが安心して使える階段づくりを目指しましょう。

勾配・踊り場・踏面・段鼻の基準とは

階段の安全性を確保するためには、「勾配」「踏面」「けあげ」「段鼻」といった要素の見直しが重要です。

一般的な住宅で安全とされる階段の勾配は、30〜35度程度。急すぎる階段は転倒や踏み外しのリスクが高まり、特に高齢者にとっては負担になります。

建築基準法では、けあげ（段の高さ）は23cm以下、踏面（足を乗せる部分の奥行き）は15cm以上と定められていますが、バリアフリーの観点ではより緩やかな基準が推奨されます。

たとえばバリアフリー対応の設計では、「けあげは18cm以下」「踏面は26cm以上」とされており、足をしっかりと乗せられる奥行きがあることで、昇降時の安定感が増します。

また、階段の途中に「踊り場（休憩スペース）」を設けることで、負担を軽減し、万が一つまずいた場合の転落距離を短くする効果があります。

段鼻（段の先端部分）は視認性を高めるため、床材と色を変えたり、エッジに滑り止め加工を施したりするのが一般的です。

これにより、段差の認識をしやすくし、つまずきを防止することができます。

手すり・照明・滑りにくい仕上げ・視覚的な識別の配慮

階段のバリアフリー化において、手すりは最も重要な要素のひとつです。

昇降時のバランス維持を助けるだけでなく、つかまりながら安心して移動するための支えになります。

住宅向けのバリアフリーリフォームでは、手すりの高さは70〜85cm程度が推奨されています。

また、手すりは「連続して設置されていること」「壁からの間隔が適切であること」「つかみやすい形状であること」が大切です。可能であれば両側に設置するのが理想的です。

さらに、視認性の向上も重要です。段差の先端に明確な色分けを施す、段鼻部分に蓄光テープや滑り止めテープを貼るといった対策は、高齢者や視覚に不安がある人にとって有効です。

階段の照明にも気を配りましょう。暗い場所では段差が認識しづらく、事故の原因になります。

人感センサー付きの照明や、足元灯の設置により、夜間でも安全に階段を利用できるようになります。

また、床材についても滑りにくいものを選びましょう。特に、靴下やスリッパでの移動が多い家庭では、フローリング調の素材よりも、滑りにくい加工がされた階段用マットやノンスリップ加工の床材を採用することをおすすめします。

これらの設計・施工ポイントをしっかり押さえることで、見た目や機能性を損なうことなく、快適で安全な階段を実現できます。

自宅階段の改修方法別メリット・デメリット

階段のバリアフリー化には、いくつかの改修方法があります。

ここでは主に「スロープへの変更」と「階段のまま改修する方法」に分けて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。ご自宅の構造や家族のニーズに応じて、最適な方法を検討しましょう。

段差を解消してスロープ化・傾斜路化する選択肢

階段を撤去してスロープに変更することで、車いす利用者や歩行器を使用する高齢者、ベビーカーを使う家族にとって、非常に使いやすい環境を整えることができます。

スロープは垂直移動を緩やかな斜面に変えるため、身体的な負担が大幅に軽減されます。

スロープの設計には基準があります。例えば、住宅用途では1/12（1mの高さに対して12mの長さ）程度の勾配が目安とされています。

勾配が急すぎると自走式の車いすでは昇降が難しくなり、逆に長すぎると設置スペースが必要になるため、住宅の敷地条件が大きく影響します。

【メリット】

• 車いすや歩行器が使えるようになる
• 転倒リスクが大きく減少する
• 介助者の負担も軽減される

【デメリット】

• 長さが必要で設置スペースに制約がある
• 工事費用が高額になる傾向がある
• 建物構造や敷地条件によっては施工不可の場合もある

このように、スロープ化は非常に有効な手段ではありますが、物理的・費用的な条件をクリアする必要があるため、専門家による現地調査と相談が不可欠です。

階段を残しつつ手すり・踏面拡張・滑り止め等で改善する方法

既存の階段を活かしつつ、安全性や利便性を高める方法も広く採用されています。

具体的には、手すりの増設、踏面を拡張する板材の取り付け、滑り止めマットや段差識別用の色分けテープの貼付などが挙げられます。

【メリット】

• 比較的低コストで施工できる
• 工期が短く、生活への影響が少ない
• 原状回復がしやすい方法もある

【デメリット】

• 段差は残るため、車いすには対応できない
• 根本的な構造改善ではないため、重度の障がい者や高齢者には不十分な場合もある
• 手すりの設置位置や照明条件によっては効果が限定されることもある

特に階段の踏面を広くすることで、足をしっかり置けるようになり、安定感が増します。

また、手すりを両側に設置したり、滑り止め付きのマットを設置したりすることで、簡易的ながらも安全性を大きく向上させることが可能です。

スロープ化が難しい住宅では、これらの工夫によって、階段の安全性を高めていくことが現実的な選択肢となるでしょう。

改修にかかる費用と補助制度・税制優遇

階段のバリアフリー化を考える際、多くの方が気になるのが「費用」と「補助制度」です。この章では、主な改修にかかる費用の目安と、自治体などで用意されている補助金や減税制度について詳しく解説します。賢く制度を活用し、無理なく安心な住まいを実現しましょう。

一般的な改修費用の目安と費用を抑えるポイント

階段のバリアフリー改修にかかる費用は、改修内容や建物の構造によって大きく異なります。

以下に、主な改修内容ごとの費用の目安を紹介します。

※上記はあくまで目安であり、施工内容・地域・工務店によって異なります。

費用を抑えるためのポイントは以下の通りです：

• 既存の構造を活かす改修：全面リフォームではなく、必要な箇所に限定することで費用を抑えられます。
• まとめて工事を依頼する：他のリフォームと同時に行うと、工賃や出張費を削減できます。
• 複数社から見積もりを取る：施工内容や価格を比較し、納得できる業者に依頼することが大切です。

予算に応じた工事の優先順位をつけることで、費用対効果の高い改修が可能になります。

補助金・固定資産税減額など制度を活用する方法

階段を含む住宅のバリアフリー改修には、各種の公的支援制度があります。

特に以下のような制度が利用可能です

● 自治体によるバリアフリー改修助成制度

多くの市区町村では、高齢者や障がい者が住む住宅に対して、バリアフリー改修の費用の一部を補助する制度があります。補助対象になるのは、以下のような工事です：

• 階段への手すり設置
• 踏面の拡張・滑り止めの施工
• 勾配の緩和やスロープ化　など

補助金額は自治体により異なり、工事費の1/2〜2/3程度、上限10万円～20万円ほどのケースが多いです。

申請には事前の手続きが必要で、着工前に申請しなければならない点に注意が必要です。

● 固定資産税の減額措置

一定の条件を満たしたバリアフリー改修を行うと、翌年度の固定資産税が1/3軽減される制度があります。

例えば、高齢者または障がい者が住む住宅で、手すりの設置や段差解消などの工事を実施した場合に対象となります。

この制度の主な要件は以下の通りです：

• 築10年以上の住宅
• 改修費用が50万円以上（国の基準）
• 所有者が住んでいる住宅であること
• 市区町村に事前申請すること

詳細はお住まいの市区町村の役所・ホームページで確認できます。

● 介護保険による住宅改修費の支給

要介護認定を受けている方がいる世帯では、介護保険を利用して最大20万円（1割負担で実質2万円）の住宅改修費用が支給される制度もあります。

対象工事には階段の手すり取り付けや滑り止め施工なども含まれます。

これらの制度を活用することで、自己負担を大きく軽減しながら安全性の高い住まいを実現できます。

申請手続きや対象要件は制度ごとに異なるため、事前に確認し、必要書類を準備したうえで進めましょう。

改修を始める前にチェックすべき5つのステップ

階段のバリアフリー改修を成功させるには、事前の準備と計画が欠かせません。

この章では、実際に工事を始める前に行うべきステップを5つに分けて解説します。

現状把握から専門家への相談まで、順を追って進めていくことで、安心で納得のいくリフォームを実現できます。

①現状を写真・寸法で記録する

まず最初に行うべきは、階段の「現状把握」です。
以下のようなポイントをチェックし、記録しておきましょう。

• 階段の段数・けあげ（段の高さ）・踏面（奥行き）
• 階段の幅や勾配（角度）
• 手すりの有無と高さ・位置
• 使用している床材の種類と滑りやすさ
• 昼間・夜間の照明状況（明るさや影の出方）

これらをスマートフォンなどで写真に収め、メジャーで寸法を測って記録しておくことで、後に専門業者に相談する際の資料になります。

図や写真を用意しておくと、視覚的に問題点を把握しやすくなり、スムーズに対策を進めることができます。

②安全・法令・税制の観点から優先順位を付ける

次に行うべきは、どの部分から改修すべきかを整理することです。

ポイントは「危険度」「使用頻度」「制度の適用可否」の3つです。

たとえば：

• 手すりがなく、段差も高い：→転倒リスクが高いため優先的に対応
• 滑りやすい素材の踏面：→マットや加工で早めに改善
• 勾配が急すぎる階段：→構造上の制限がある場合は施工方法を再検討

また、バリアフリー改修には法的基準や誘導基準があり、地方自治体によっては条例で定められている場合もあります。

補助金や減税制度の対象となるには、こうした基準を満たす必要があるため、改修の優先順位を制度の要件に合わせて考えることも重要です。

さらに、施工業者との相談時にも「どこが最も危険か」「どの制度を使いたいか」が明確になっていると、より的確な提案を受けやすくなります。

③施工会社・設計者への相談ポイント

改修計画を立てたら、次は信頼できる専門家に相談しましょう。相談時には、以下のようなポイントを確認するとよいでしょう。

• 過去に階段のバリアフリー改修の実績があるか
• 手すりや滑り止めの種類・配置など具体的な提案ができるか
• 法令や自治体の制度に精通しているか
• 補助金申請や図面作成のサポートが可能か

また、見積もりを依頼する際は、1社だけでなく複数の業者から取り寄せ、施工内容・費用・対応範囲などを比較検討することが大切です。

信頼できる施工会社を選ぶことで、工事の品質はもちろん、施工後のフォローや制度申請のサポートもスムーズに進み、安心感のあるリフォームが実現できます。

最後に―階段バリアフリー化で「安心・安全な暮らし」を一歩前へ

階段は日常的に使う場所でありながら、転倒事故のリスクが高く、高齢者や障がいのある方にとっては大きなバリアとなります。

だからこそ、手すりの設置や滑り止め加工、勾配の調整など、安全性を高める工夫が大切です。

本記事でご紹介した改修のポイントや費用、補助制度を参考に、まずはご自宅の階段の状態を確認してみてください。

そのうえで、必要な改修を専門家に相談し、安全で快適な住環境づくりに取り組みましょう。

一歩ずつ環境を整えることで、家族全員が安心して暮らせる住まいへと近づいていけます。