- 投稿日 2025/12/22
- 更新日 2026/01/05
バリアフリーな浴槽の「またぎ」設計と安全な選び方
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浴槽への出入りで「またぐのがつらい」と感じる方は少なくありません。
高齢者や障がいがある方の安全な入浴を支えるには、浴槽の「またぎ」高さや形状、手すりなどの工夫が欠かせません。
本記事では、またぎの高さが引き起こすリスクや、バリアフリー浴槽の選び方、設計・改修時の基準、費用や補助制度まで詳しく解説します。
自宅の入浴環境を見直し、安全・安心な毎日を過ごすための第一歩としてお役立てください。
目次
浴槽またぎが高いと何が起きる?入浴時のリスクと実態
浴槽の「またぎ」が高すぎると、入浴時に大きな負担がかかり、転倒やケガのリスクが高まります。
ここでは、そのリスクの具体例と、高齢者や障がい者の実態をデータと共に見ていきます。
またぎ高さが引き起こす転倒・負担のメカニズム
入浴時に足を大きく上げて浴槽をまたぐ動作は、加齢や身体機能の低下により困難になりやすい動作のひとつです。
浴槽の高さが一般的に50cm前後ある場合、足を高く上げる必要があり、片足立ちになることでバランスを崩しやすくなります。
さらに、浴室は床が滑りやすく、温度差によるヒートショックなども重なるため、非常に転倒しやすい環境です。
特に筋力が衰えた高齢者や障がいのある方にとっては、日々の入浴が事故のリスクと隣り合わせになっていることも珍しくありません。
転倒により骨折や頭部の打撲を起こすと、介護状態へ進行するきっかけにもなるため、浴槽のまたぎは安全性の確保が極めて重要です。
住宅のバリアフリー化における「またぎやすい浴槽」の現状データ
内閣府の調査や各自治体の住宅改修実績を見ると、「浴室の安全対策」はバリアフリー化の中でも非常にニーズが高い分野です。
特に「浴槽のまたぎ高さを低くする」工事は、手すりの設置に次いで希望される項目となっています。
たとえば、全国社会福祉協議会がまとめた資料によると、浴槽のまたぎ部分を30〜40cm程度に抑える設計が「転倒防止に効果的」とされており、介護保険の住宅改修でも対象となっています。
また、自治体によっては高齢者世帯や障がい者世帯に対し、入浴動作の改善を目的とした浴槽改修への助成金を支給しているケースもあります。
このように、浴槽のまたぎ高さに対する関心は高まっており、バリアフリー住宅設計の中でも重要な課題となっていることがわかります。
理想的なまたぎ高さ・浴槽形状・設備とは

浴槽をバリアフリー化する際には、「またぎやすさ」を意識した高さや形状の選定が重要です。
さらに、手すりや滑り止めなどの補助設備も組み合わせることで、入浴動作の安全性が格段に向上します。
ここでは、理想的な浴槽設計の目安と、周辺設備の工夫について解説します。
またぎ高さの目安と浴槽形状の選び方
バリアフリー住宅において理想的とされる浴槽のまたぎ高さは、30cm〜40cm前後です。
これ以上の高さになると、足を大きく持ち上げる必要があり、バランスを崩しやすくなるため注意が必要です。一般的なユニットバスの浴槽は約50cmの高さがあるため、そのままでは高齢者や障がいのある方にとって大きな負担となるケースが多く見受けられます。
また、浴槽の形状もまたぎやすさに大きく関わります。たとえば、底が浅く出入りしやすい「ストレートタイプ」や、側面の一部が低く設計された「低床浴槽」などは、安全性の向上に効果的です。
洗い場との段差が少ない設計や、段差自体を減らす工夫を施した浴槽を選ぶことで、入浴時の自立をサポートできます。
さらに、浴槽の素材にも注目したいポイントがあります。表面に滑り止め加工が施されたタイプや、保温性に優れた素材のものを選ぶことで、安全性と快適性の両立が可能になります。
手すり・踏み台・滑りにくい床など付帯設備の役割
浴槽のまたぎを補助する設備として、最も一般的なのが「手すり」の設置です。
特に浴槽の出入り口付近に設置する縦手すりは、立ち座りの動作を安定させるのに効果的です。
L字型やT字型の手すりを組み合わせて使うことで、浴室内での移動をより安全にサポートできます。
また、床に置くだけの浴槽用踏み台を活用すれば、またぎ高さを段階的に調整することが可能です。
滑りにくい床材や浴室マットも転倒防止に有効で、比較的低コストで導入できます。
これらの設備は、必ずしもリフォームを伴わずとも設置できるものが多く、市販の福祉用具としても流通しています。
住宅の構造や利用者の身体状態に応じて、適切な組み合わせを検討することが大切です。
設計・施工時に知っておくべき基準・法律・リフォーム条件

浴槽のまたぎ高さを改善するには、単なる設備選びだけでなく、住宅リフォームの基準や制度、介護保険の対象となる改修工事の条件などを把握することが重要です。
この章では、設計・施工を進める上で知っておきたい基準と制度の概要を解説します。
住宅・福祉系のバリアフリー技術基準の浴槽またぎ対応
国が定めるバリアフリー住宅の整備指針や、介護保険制度に基づく住宅改修ガイドラインには、浴室まわりの安全対策に関する規定があります。
特に、住宅金融支援機構が示す「高齢者等対応住宅設計基準」では、浴室には手すりを1箇所以上設けること、滑りにくい床材を使用すること、開き戸ではなく引き戸を推奨することなどが記載されています。
また、浴槽のまたぎに関しても、「洗い場と浴槽の高低差を可能な限り小さくすること」が推奨されており、理想的な高さは30~40cm程度とされています。
これらの基準は、バリアフリー住宅を新築・改修する際の参考資料として用いられ、リフォーム業者もこの指針を元に設計を行っています。
このような基準を理解することで、設計者だけでなく施主自身も適切な判断がしやすくなり、安全性の高い浴室をつくるうえで大きな手助けとなります。
リフォーム工事対象として「またぎ高さを低くする工事」の位置づけ
「またぎ高さを低くする」ことを目的とした浴槽の交換工事は、介護保険における住宅改修の対象となるケースがあります。
具体的には、「浴槽の取替え工事」または「浴槽またぎ部の段差解消工事」に該当する場合、介護保険の補助を受けることができます。
ただし、要支援・要介護認定を受けている方が対象であり、事前にケアマネジャーの意見書や申請手続きが必要です。
さらに、自治体独自の補助金制度を設けている地域も多く、特に高齢者や障がい者の世帯に対しては、工事費の一部を助成する仕組みが整えられています。
対象となる工事内容や金額、申請手続きは自治体によって異なるため、事前の確認が不可欠です。
これらの制度を活用することで、自己負担を抑えながら、安全性を高めるリフォームを実現することが可能です。
自宅の浴槽をより安心して使える環境にするためにも、補助制度の有無をチェックし、計画的に進めましょう。
またぎ浴槽リフォームの費用・補助制度・失敗を避けるポイント

浴槽のまたぎを低くするためのリフォームは、費用の面でも心理的なハードルになりがちです。
しかし、補助制度や事前の準備をしっかり行えば、費用を抑えて安全な浴室を手に入れることが可能です。
この章では、リフォーム費用の目安、活用できる補助制度、そして失敗しないための注意点について解説します。
改修の費用目安と自治体・介護保険の補助制度
浴槽のまたぎを低くするリフォームの費用は、工事の内容や浴室の構造によって異なりますが、一般的には15万円〜40万円程度が目安です。
既存の浴槽を取り外して新しい低床タイプに交換する場合、給排水工事や浴室の補修も必要になることが多く、費用がかさむ傾向があります。
こうしたリフォームに活用できるのが「介護保険の住宅改修費支給制度」です。
要介護または要支援の認定を受けている方であれば、最大20万円までの工事費に対して9割(上限18万円)の補助を受けることができます。
この制度では、浴槽の取り替えや段差の解消、手すりの設置などが対象となります。
また、介護保険以外にも、各自治体が独自に高齢者・障がい者向けにリフォーム補助金を用意していることがあります。
助成額や対象工事、申請条件は自治体によって異なるため、事前に市区町村の窓口やホームページで確認しておくと良いでしょう。
失敗しないためのチェック・事例から学ぶ注意点
リフォーム後に「思ったより使いにくい」「家族に合わない設備だった」と後悔するケースも少なくありません。
失敗を防ぐためには、施工前の十分なヒアリングと下調べが不可欠です。
よくある失敗例としては、手すりの位置が適切でなく、かえって使いづらくなってしまったというものや、浴槽の縁が低すぎて湯がこぼれやすくなったケースがあります。
また、またぎを低くしたことで湯量が減り、保温性が損なわれるといった副作用も考慮が必要です。
さらに、介護する家族の動線や負担も設計に含めることが重要です。
介助者が使いやすいように動きやすいスペースを確保したり、二人での入浴補助がしやすいレイアウトにすることで、より実用的な浴室になります。
リフォーム前には、実際の動作をシミュレーションしたり、福祉住環境コーディネーターなど専門家に相談することが、失敗を防ぐ大きなポイントとなります。
自宅でできる!浴槽のまたぎ高さを改善する簡易対策

リフォーム工事を行わずとも、手軽に浴槽の「またぎ」動作を改善する方法があります。
予算や時間が限られている場合でも、福祉用具の活用や動作の工夫によって、入浴時の安全性と快適性を高めることが可能です。
ここでは、すぐに実践できる2つの対策をご紹介します。
浴槽用ステップ・手すりの後付けで改善する方法
市販の福祉用具を使えば、浴槽のまたぎに必要な動作を軽減することができます。
たとえば、「浴槽用ステップ」は床に置くだけで簡単に段差を緩やかにし、足を持ち上げる高さを軽減できます。
ステップの表面には滑り止め加工が施されており、濡れた浴室でも安全に使用できるよう設計されています。
また、「後付けタイプの手すり」は吸盤やクランプで固定できるため、壁や浴槽を傷つけることなく設置可能です。
縦型手すりやL字型手すりを浴槽の縁や出入口に設けることで、立ち上がりやまたぎ動作を安定させることができます。
これらのアイテムは、介護ショップやネット通販でも入手可能で、数千円〜1万円前後と比較的リーズナブルです。
設置も簡単なため、一時的な使用や試験的な導入にも向いています。
浴室内での安全な動作指導・動作補助の工夫
機器に頼らずとも、入浴動作の工夫や家族によるサポートによって安全性を高めることができます。
たとえば、またぐときに片足ずつ確実に体重を移動させるように意識する、浴槽の縁に手をかけるタイミングを調整するなど、基本的な動作改善だけでも負担は軽減されます。
福祉用具専門相談員やケアマネジャーに相談することで、本人に適した入浴方法のアドバイスを受けることもできます。
また、家族が入浴を見守る場合には、無理に支えすぎず、必要に応じて介助ベルトなどの簡易器具を活用することで、安全性を保ちながら負担を減らすことが可能です。
動作の一工夫で日々の入浴が安心に変わるため、設備の導入前にまずこうした実践的な対応を試してみるのも有効です。
施設・事業所における「またぎ対応」設計の実例とポイント

高齢者施設や福祉事業所では、利用者の安全性と介助のしやすさを両立させる浴室設計が求められています。
ここでは、実際に導入されている設備の工夫や、設計時のポイントについて紹介します。
自宅でのバリアフリー設計にも活かせるヒントが見つかるでしょう。
介護施設で導入されているユニバーサル浴槽の工夫
介護施設では、一般的な家庭用浴槽とは異なり、「またぎやすさ」と「介助のしやすさ」の両方を重視した浴槽設計が取り入れられています。
たとえば、「低床型ユニットバス」や「またぎ部がカットされた特殊浴槽」、さらに「電動昇降機能付き浴槽」などが代表的です。
これらの浴槽は、またぎ部分の高さが20cm前後と非常に低く設計されており、足の可動域が制限されている方でも出入りしやすいのが特徴です。
また、浴槽内にベンチシートが設けられているものも多く、姿勢を安定させたまま入浴できるよう配慮されています。
さらに、施設によっては「個浴方式」や「機械浴」の導入も進んでおり、利用者の状態に合わせた入浴スタイルの選択が可能となっています。
こうした設計は、家庭用リフォームにも応用できる部分が多く、参考にしやすい事例です。
設計・導線・人員配置まで考慮した浴室づくり
施設での浴室設計では、浴槽そのものだけでなく、動線や介助者の動きまで想定した空間づくりが重要です。
たとえば、浴室の入口を広めに取り、車いすや歩行器でも出入りしやすいようにする、床をフラットに保つ、照明を明るめに設定するなど、細かな配慮が安全性を大きく左右します。
また、介助を行うスタッフの動きやすさも重要です。
浴槽の両側に十分なスペースを設けたり、洗い場に介助用椅子や可動式手すりを設置することで、スタッフの負担軽減にもつながります。
さらに、緊急時に備えて非常ボタンや見守りセンサーを設けることで、事故の早期対応も可能になります。
こうした施設設計の工夫は、自宅での高齢者介護にも取り入れることができ、今後の在宅介護を見据えた住宅改修のヒントとしても非常に参考になります。
浴槽またぎを含む水回りバリアフリーの未来展望と導入のすすめ
浴室のバリアフリー化は、これからの時代に欠かせない住まいづくりの一環です。
高齢化社会の進展により、在宅での生活を長く快適に続けるための設備改善は今後ますます重要になります。
中でも「またぎやすい浴槽」の導入は、毎日の入浴を支える基本であり、家庭内の事故を未然に防ぐ大切な対策といえるでしょう。
今後は、福祉用具やユニバーサルデザインのさらなる進化により、より使いやすく、設置も簡単な製品が登場していくと考えられます。
また、行政の支援制度も拡充傾向にあり、必要な改修を無理なく行える環境も整いつつあります。
まずは自宅の浴室環境をチェックし、少しの工夫から始めてみましょう。
リフォームや補助制度の相談、具体的な設備選びの情報収集など、できることから一歩踏み出すことで、日々の安心と快適さが手に入ります。
関連記事や事例を参考にしながら、自分や家族に合った入浴環境を整えていきましょう。
